今回レビューするのはロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」、赤青ベゼルが特徴の通称“ペプシ”モデル。文句のつけようがないほどに圧倒的な完成度を誇るが、相変わらず入手困難であることは残念だ。

“良すぎる”時計、ロレックス
以前、著名な自動車評論家と話をしたことがある。彼は、メルセデスには乗らない、なぜなら良すぎるからだと語った。
時計の評論家も似たようなもので、ロレックスを買う人は多くない。買うと、時計に対する興味を失いかねないからだ。実際、僕の友人のYも、ロレックスのサブマリーナを買って以降、時計の世界から姿を消してしまった。とはいえ、ロレックスは避けては通れない道だ。久々に着けたロレックスは、さすがに凄かった。それこそ、時計に対する興味を失いかねないほどに。
借りた個体は「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」、通称“ペプシ”だ。ベゼルはセラミックス製の赤黒になり、中身も最新のキャリバー3285に進化した。また、ジュビリーブレスレットからは左右のガタがなくなった。時計としては比類なし、オシマイとしたいけど、それでは記事にならないので続けたい。

外装は圧倒的、ただし……
2000年以降、ロレックスは外装メーカーを買収し、一貫したマニュファクチュールとなった。1番大きなポイントは、ブレスレットメーカーであるゲイ・フレアーの買収だ。さまざまなメーカーにブレスレットを提供していた同社を加えることで、ロレックスのブレスレットは明らかに良くなった。
筆者はロレックスを買うとき、必ず3連のオイスターブレスを選んでいた。プラ風防のモデルならさておき、頭の重くなったサファイア風防のモデルに付けるなら、ジュビリーブレスレットはいささか頼りなかったからだ。しかし、オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱの新しいジュビリーブレスレットは、ジュビリーらしい適度なしなやかさと、左右の剛性を両立していた。これはアリだ。
ロレックスと他社との違いは、フラッシュフィット(弓管)とケースの噛み合いだ。ロレックスは明らかにしていないが、現在同社は、フラッシュフィットとケースをひとつひとつ計測し、最適なマッチングで噛み合うようにしている。フラッシュフィットとケースの隙間が完全に詰まっている理由(そして、ブレスレットの交換がかなり難しい理由)であり、他社がロレックスに追いつけない理由だ。ちなみに同社は、この精密な噛み合わせを「コンシールドアタッチメントシステム」と名付けている。

回転ベゼルの感触は圧倒的
本作は30分単位で動かせる回転ベゼルを持っている。この感触は「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」とはまったく別で、バネ力を感じさせないのに、確実に動き、固定される。支持精度はさすがで、回転ベゼルは必ず30分単位の位置に固定される。
ベゼルのトップにあしらわれるのは、ツートーンに色付けされたセラミックス製のプレート。筆者の知る限り、以前のものに比べてベゼルの発色が改善された印象を受ける。あくまで私見だが、ロレックスは微妙にチューニングしているのではないか。

リュウズのガタのなさも、さすがにロレックスだ。現行の時計はどれもガタを詰めているが、ロレックスはさらに詰まった印象を受ける。もっとも防水性を高めるためか、リュウズを回すと、パッキンの存在を明確に感じる。このパッキン感も、他社にはないものだ。
驚かされたのは、リュウズの感触である。非常にスムーズなうえ、時計回り、反時計回りでもトルクはまったく同じだった。日付の早送りはできないが、12時になると瞬時に切り替わるほか、針の逆戻しに合わせて、日付も逆に戻る。日付の戻りには約3時間かかるが、これは十分許容範囲だ。さすがにGMTウォッチの業界標準だけあって、操作系には文句の付けようがない。

文字盤はロレックス スーパーコピーおなじみのブラックラッカー仕上げ。ダイヤモンドカット仕上げの針を合わせているにもかかわらず、視認性は良好だった。強い光源下でも、針が埋没することはなく、きちんと時間を読み取れた。ただしベゼルが“強く”なったことを考えると、針は「オイスター パーペチュアル エクスプローラーⅡ」並に太くてもいいかもしれない。もっとも、これは好みの問題だ。

ちなみに、搭載するキャリバー3285の正確な精度については確認しなかった。ただし3日間の携帯精度は+2秒以内だった。これもロレックスの名に恥じないものだ。
相変わらず素晴らしい、ただし入手は難しい
意地悪くテストしてみたが、新しいGMTマスター Ⅱには文句の付けようがない。ブレスレットのエクステンションが弱いのは残念だが、時計とブレスレットのバランスは良く、ケースも薄く(12.1mmしかない)、バックルが短いため、細腕にもよく馴染む。操作系も極度に洗練されているし、精度は申し分ない。
もともと良かったケースの磨きは、2015年以降、さらに改善された印象を受ける。仮に筆者が現行でロレックスを選ぶなら、「オイスター パーペチュアル エクスプローラー」のコンビ、「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」、そして本作になる。
万人にお勧めできる時計だが、相変わらず入手が困難なのは残念だ。